またWOWOWのドラマが一気に配信され始めました。しばらく新作が入ってこなかったので、いつ入ってくるのかと楽しみにしていたところ、確か6月頃から続々入ってきていました。ただ、観たい作品が多すぎてなかなか手が回らず、その間にも次々と配信が始まり、とても追いつけていない状況です。
今回取り上げる作品には、非現実的な設定でありながらも、複雑な人間の感情を描いたものが多く、考えさせられるものばかりです。またまた暗めの作品にはなりますがどれもおすすめの作品です。
以前からご紹介しているNetflixでも観られるおすすめのWOWOWドラマPart4としてご紹介します。
誰かがこの町で
地域の決まりや安全を守ることは大切ですが、それが行き過ぎると集団心理によって恐ろしい事態を招く——『誰かがこの町で』は、そんなことを強く考えさせられる物語でした。
「誰かがやっちゃいけないことを知った時どうする?」誰もが一度は、自分の身を守るために真実を隠したり、納得できないルールに従わざるを得ない場面に遭遇したりしたことがあるのではないでしょうか。正しいことを言っているはずなのに、一人だけ異論を唱えるとおかしな人扱いされる——集団心理の恐ろしさは、そこにあります。このドラマは、その心理を巧みに描き出しています。
舞台は埼玉県のとある住宅地、福羽地区。2001年、本木千春(大塚寧々さん)の幼い息子が殺害される事件が起こります。第1話から「この町は何かがおかしい、何かを隠している」という不穏な空気が漂っています。
ドラマは2001年と2024年の二つの時代が交互に描かれます。2024年パートでは、江口洋介さん演じる法律事務所の調査員・真崎が、弁護士の岩田(鶴田真由さん)から依頼を受けます。依頼内容は、岩田の大学の友人の娘と名乗る麻希(蒔田彩珠さん)についての調査——一家は失踪し、自分だけが捨てられたと主張する彼女の真実を探るというものです。
この「失踪」と「少年殺害」の関連性が徐々に明らかになっていくのが最大の見どころです。加えて、登場人物たちはそれぞれが何かしらの過去を背負っており、失踪事件を調べることで自身の過去の罪と向き合わざるを得なくなり、その葛藤も見逃せません。
キャストでは、江口洋介さんの安定感はもちろん、蒔田彩珠さんの存在感が際立ちます。彼女はどの作品でも観る者を引き込む魅力がありますが、本作では「自分は何者なのか」を知るために過去と向き合う麻希を繊細に演じていました。
結末を知ると悲しさが残ります。しかし、主人公たちが前に進むことができたという点に救いがありました。全4話、各話約50分とコンパクトながら、観終わった後にじっくり考えさせられる——そんな作品です。
完全無罪
このドラマの最大の見どころは、主人公自身が、かつて自分が被害者となった誘拐事件と同時期に起こった少女誘拐殺人事件の弁護を担い、冤罪の可能性を追うという複雑な構造にあります。
この設定が正義のために戦う弁護士を描く単なる法廷サスペンスに終わらせず、主人公の内面の揺れを通して、正義・罪・被害者感情のはざまと向き合わせる人間ドラマを作り上げています。
広瀬アリスさん演じる松岡千沙は、21年前に起きた少女誘拐殺人事件「綾川事件」と同時期に起きた別の誘拐事件の生存者です。彼女は苦しい過去を抱えながら生きており、事件を調べるために10年ぶりに地元へ戻る場面の絶叫は、画面のこちら側まで苦しくなるほどでした。やがて千沙は、冤罪を訴える平山(北村有起哉さん)の声を聞き、彼の無実を信じて再審請求へと動き出します。
一方、被害者遺族・敏恵(財前直見さん)に寄り添い続ける元刑事・有森(奥田瑛二さん)は当時その事件の担当刑事で、平山に対して違法ともいえる取り調べを行っていたようで、「特別公務員暴行陵虐罪」として再審請求で千沙と対峙することになります。同じく取り調べにあたった今井(音尾琢真さん)の証言によって、物語はさらに新たな展開を迎えます。犯人とされる平山に無実の可能性がある一方で、千沙自身は「本当にやっていないのか」という疑念を拭いきれず、誰もが怪しく見えて信用できなくなっていくのです。北村有起哉さんは、シーンによって一体どれが本当の平山なのかわからなくさせる、底の見えない演技で、私はどうしても悪い方へとらえてしまいました(笑)。
以前も裁判系のドラマを観て思いましたが、人の証言とは本当に難しいものです。主人公自身が関わった事件の裁判を、主人公自身が弁護するなど実際にはあり得るのかと疑いながらも、物語は二転三転し、第3話の終盤で平山が口にするあるセリフに背筋が凍る思いがしました。
そして改めて思うのは、この作品の面白さは、まさにその複雑な構造——「被害者でもある弁護士」が見る冤罪の物語——にあるということです。最後まで緊張の途切れることのなく、一気見必須の作品です。全5話、各話約50分です。
水晶の鼓動 殺人分析班
<第三話>明日よる10時
— WOWOWオリジナルドラマ (@drama_wowow) November 26, 2016
『連続ドラマW 水晶の鼓動 殺人分析班』
トレミー(古川雄輝)と対面する塔子(木村文乃)。
塔子はトレミーに何を伝えるのか
予告映像はこちら⇒https://t.co/XAhWMQxZ5t#wowow #水晶の鼓動 pic.twitter.com/8RcCZkdJag
このドラマは、猟奇殺人から始まる緊張感あふれる刑事ドラマであり、シリーズを逆順に視聴しても十分楽しめる作品です。ただし、人間関係や伏線をより深く味わうには、時系列順での視聴が理想的だと感じました。
まず、本作は『蝶の力学』と同じく、冒頭は単なる猟奇殺人に見えますが、犯人の動機や背景が全く予測できない点が魅力です。赤く染められ奇妙な記号が残された事件を追ううち、尾行や爆発事件が絡み、二つの事件が繋がっていく構成に引き込まれます。そして今回も予想外の人物が犯人であり、最後まで先が読めません。
また、シリーズを通して主人公・如月(木村文乃さん)の成長や、複雑な人間関係・心理が描かれている点も見どころです。先に観た『蝶の力学』では如月がずいぶん成長していたため、初めてその回から観た際は十一係のチーム連携が自然すぎて違和感がありましたが、シリーズ終盤だったと知り納得しました。『水晶の鼓動』での如月の行動には時々、もうやめておきましょうよ(笑)と思わず止めたくなり、最新話と比べてしまうとやはり未熟さを感じました。
さらに、『水晶の鼓動』という題名の意味も、如月の父(仲村トオルさん)の形見である腕時計だと途中で理解でき、それが壊れかけた際の如月の様子から、父親の存在の大きさを感じました。
時系列は『石の繭』→『水晶の鼓動』→『蝶の力学』の順ですが、配信は逆順のため、全く逆から観ていることになります。それでも意外と観られます。(なぜか配信される順番が時系列が後のものから配信されておりなぜだろう?という感じです。Netflixではあと『石の繭』だけが未配信です。)しかし、古川雄輝さん演じる「トレミー」との関係性など、前シリーズで描かれた背景が分からないままの状態でした。最終話の心理戦はハラハラする緊張感がすごく、凶悪犯のようでありながら、如月との最後のシーンではそう見えない表情もあり、非常に気になりました。
前作を知らなくても楽しめますが、やはり以前からのつながりを知っていたほうがより深く味わえます。そのため、スピンオフ『悪の波動』も含め、前作を必ず観たいと思いました。全5話、各話約50分です。
終わりに
『誰かがこの町で』は自分に照らし合わせられる場面が多く現実味があり、昔を振り返ってしまいました。『完全無罪』は設定や展開は非現実的なものの、被害者・加害者の生々しい感情が描かれ、現実の殺人事件両者の心情をうかがえます。『殺人分析班シリーズ』も非現実的な場面はありますが、気になるキャラクターも現れ、全話観たいと思いました。全体に暗めですが、いずれも過去を遡って解決へ導く展開で一気に観られるのでおすすめです。


